はじめに 

いくつかの偶然が良い結果を生んだことから「教訓」を含め同じ診断された方の参考になればと思います。縦隔腫瘍と言っても症例は様々であり、私自身のケースですので、あくまでも参考にしていただければと思います。ブログですがこのページのみです。 
縦隔腫瘍や胸腺腫に関する解説は、医療機関のホームページに詳しく出ているのであまり記載しません。 
通院・検査・入院・手術とロボット支援手術についてと費用に関することをメインに記述します。 
特に縦隔腫瘍に関するロボット支援手術は健康保険適用が始まったばかりで、それほど症例数も多くないことから皆様の参考の為に経験を共有させて頂きます。 

「教訓」 

・人間ドック(CT検査)で早期発見!
・病院選びは慎重に!
TVの医療情報番組は意外に役に立つ! 
・ロボット支援手術は術後のQOL
  (クオリティ・オブ・ライフ)が素晴らしい!
・費用に関しては、付加給付のある健康保険組合
  加入なら結構お金が戻ってくる!

なおこのブログを作成するに当たり、初期の胸腺腫の先輩患者であるg.field さんのページを参考にさせて頂きました。 
https://kyousensyu-g-field.blogspot.com/
胸腺腫関連のブログは症状が進行している方の方が多いので再発とかネガティブな状況が記載されていますが初期で摘出手術されて予後も順調であるg.field さんにのブログにはとても勇気づけられました。 



経緯 (発覚から手術まで 

自覚症状は全くありません。妻と同じ日(201710月)に同じ病院で人間ドックを受けたのに私だけ結果の返却が遅いと思っていたら「縦隔腫瘍の疑い」という結果と情報提供の封書(CD同封)付きで結果が届きました。人間ドックの結果は「縦隔腫瘍の疑い」との記載しかないので情報提供の封書をもって地域の中核病院を受診することにしました。 
受診する前に「縦隔腫瘍」でインターネット検索すると呼吸器外科が多く出てくるので、呼吸器外科の外来の日に紹介状を持っていきましたが、受付で呼吸器内科を受診するように言われ呼吸器内科を受診しました。 
この選択は間違いだと思いますが、結果的には時間稼ぎができたのでマイナスではなかったです。 理由は後でわかります。。 
血液検査とMRIと造影CTを受け画像診断から「前縦隔腫瘍 胸腺腫の疑い」との診断結果です。腫瘍の位置が胸骨の裏なので病理診断の為の針生検は手術と同じくらい大変なので実施せず、この時点での呼吸器内科の主治医の判断では、胸腺腫自体は進行も遅いし、石灰化もみられるので大きくなるものか経過観察でよいとのことでした。半年後にMRIの予約を入れて様子見ということになりました。 
短い期間にCT2度受けることになってしまったので、人間ドック受診も異常が見つかった時に対応してくれる医療機関で受けたほうが放射線被ばくは少なくてすむと思いました。 
CT
画像は以下の通りです。




 
前縦隔は胸骨の裏にある部位で、胸骨と脊椎の影や心臓や大血管に重なっているので、前縦隔に腫瘍があっても胸部レントゲンでは影になってしまい映りません。したがって会社の健康診断の胸部レントゲンでは発見できません。CTで偶然発見されることが多いというのはこれに起因していると思います。 

半年様子見と言われ半年考える時間があると「胸腺腫」というキーワードでインターネットでいろいろ調べます。結果として私の理解では「胸腺腫」は悪性腫瘍であり体内にあってよいものではないこと、画像診断だけでは胸腺腫の種別の特定も難しいので摘出した方がよいのではということです。 
病院のサイトの縦隔腫瘍に関する解説の中には、縦隔腫瘍には良性腫瘍と悪性腫瘍と両方のキーワードがありますが「胸腺腫」は基本的には悪性腫瘍であり、ガイドラインでは再発防止のため完全切除を推奨しています。悪性の理由は、大きくなり他の臓器を圧迫したり、他の臓器に浸潤したり、自己免疫疾患を誘発したりするからみたいです。胸腺腫も1種類だけではなく「進行の状態」と「タイプ」によって悪性度の度合いが異なる種類があるようです。胸腺腫の分類カテゴリーに胸腺がんというのもあります。胸腺がんのタイプは、胸腺以外の他の臓器にも転移するがん細胞が腫瘍に含まれているかどうかみたいです(個人で調べた見解なので最新の解説は医師に確認してください。稀な症例なので症例が多くなると情報は更新されてくると思います)。

ちなみに国立がん研究センター中央病院 呼吸器内科/希少がんセンター 後藤 悌先生の2017714日に開催された胸腺腫・胸腺癌に関するセミナー動画がとてもまとまっていて40分も解説しているのでわかりやすいです。

文書でもっと詳しく知りたい人は米国国立がん研究所が纏めた腫瘍学臨床診療ガイドラインの胸腺腫・胸腺癌のガイドラインの日本語版が以下のページにあります。

なぜ呼吸器内科の主治医は経過観察を進めたのかとも思いましたが、胸腺腫は人口10万人あたり0.44から0.68人しか罹患しない稀な疾患なため判断が難しいのかもしれませんね。 

半年後の5月にMRIを撮影しました。結果的には大きさにほぼ変化はない状況でした。手術の意思は固まっていたので呼吸器内科の主治医に手術の意思を伝えて同病院の呼吸器外科を紹介してもらい呼吸器外科を受診しました。呼吸器外科の主治医の見解は私と同じで胸腺腫は進行は遅いが悪性腫瘍なので摘出を勧めるとのことでした。腫瘍の大きさ的には胸腔鏡手術でも可能だけれど、位置が上の方なのと出血量をコントロールしやすいからということで正中切開術で実施するということで7月に手術の予定を組んで一通りのCT等の術前検査を受けて手術を待つことになりました。 

1ヶ月後の手術の為の術前の検査が終わった翌日、たまたまハードディスクレコーダーに撮りためていたTVの情報番組(2018516日放送の未来世紀ジパングの「大きく変わるがん治療最前線」)を視聴したら20184月から縦隔腫瘍摘出のロボット支援手術が健康保険適用になったという紹介を見てしまいました。 
胸中正中切開術で肋骨も切開されてしまう為、大きく傷痕も残るし術後もコルセットの生活でしばらく大変だろうなと思っていた矢先の出来事だったので最新の術式に衝撃を受けて「縦隔腫瘍 ロボット支援手術 健康保険適用」でインターネット検索したら自分の居住地域には見つからなかったものの都内で3件の病院がヒットしたのでチャレンジしてみようと決意しました。私の加入している健康保険組合に「専門医療ほっとライン」窓口があるのでそこにも電話して、保険適用で縦隔腫瘍のロボット支援手術をやっているところを調べてもらいました(インターネット検索した結果とほぼ同じ)。 因みに、その時点(20186)でインターネット検索で見つけたのは、東京医科大学病院、東京女子医大病院、順天堂大学病院でした。健康保険組合はその3か所+聖路加国際病院でした。ロボット支援手術を実施している病院でも、4月からロボット支援手術が保険適用対象になった疾患に対して、施設自体申請して認可されないと健康保険適用にならないのでタイムラグがあるようです。その時点では聖路加国際病院もホームページには保険適用の記載がありませんでしたが念のため直接問い合わせたら申請中で7月から適用になる予定との回答でした。 
翌日、手術予定だった地域の中核病院に行き、事情を説明してそこでの手術をキャンセルし紹介状を書いてもらいました。主治医も病院によって手術の対応方針が異なるし、現時点で症例的に手術に緊急を要する訳ではないので納得がいくまで病院を探すのもありだとアドバイスいただきました。 
セカンドオピニオン用の紹介状ではなく、普通の紹介状を書いていただきました。セカンドオピニオンは意見を聞くだけで転院目的となりません。私の場合はロボット支援手術を実施している病院で治療してもらうことが目的なので普通の紹介状です。 
最初から呼吸器外科にかかっていたら半年様子見になることはなく、最初に受診した時点ではロボット支援手術も健康保険適用ではなく、この選択肢に出会うことはなかったので、初診が呼吸器内科で半年様子見して時間稼ぎとなったのは冒頭に記載した「偶然」が重なった良い結果でした。 

調べてあった病院へ予約し3週間ほど待たされ
紹介状を持参して受診。紹介状に同封されていたCT等の画像からロボット支援手術が適用出来そうとの見解でその病院にて詳細な検査を実施しました。 
念のためPET-CT検査も実施し、病巣の確認と転移がないことを確認し、「胸腺腫 ステージⅠ~Ⅱの疑い」ということでロボット支援胸腔鏡下縦隔腫瘍切除術で胸腺切除の手術を実施することになりました。 
その病院での手術までの過程は以下の通りです。

 20187月中旬
  紹介状持参(CTMRI画像)で受診。ロボット支援手術可能かの相談。
実施できそうなので最新の状況確認の為、造影CT撮影(前の病院で造影CTを受けたのは8ヶ月前)
  費用:14,410
 20187月下旬
  術前検査:採血、心電図、呼吸機能検査、胸部X線撮影
  費用:8,100
 20188月初旬
  術前検査:PET-CT撮影
  費用:28,640
 20188月中旬
  術前検査結果確認、手術日(9月)決定、手術同意書の説明。
  術後の肺に関する合併症を抑制するための呼吸練習器具「インセンティブ・スパイロメーター コーチ2」
  の購入とやり方説明(入院2週間前から毎日家で肺の活性化のために実施)
  手術の際に胸腔内にガスを入れて術野をつくる為、肺がしぼんでしまうので事前に肺を膨らませて活性化させておくこと
  で術後の回復が早くなるとのことです。
  費用:220円+3,780円(器具代)
 
手術までの費用は55,150円です。PET-CTに関しては必須ではないようです。ただし、生検していないので術前に腫瘍細胞の活動状況や転移の有無が確認できるので保険適用で実施できるなら実施したほうがよいと思いました。
転院先の病院でもCTを受けることになったりしたので余計に放射線被ばくしてしまいました。 
 転院前の病院での検査等で半年で28,000円かかっていたので、最初から病院選びを慎重にしていれば出費と放射線被ばく量が抑えられたと思われます。 

縦隔腫瘍の発覚から手術まで10ヶ月を要しましたがあくまで私のケースです。私の場合、最初の病院の診断で緊急性が低いと判断されたので時間をかけて対応が取れました。腫瘍の種類によっては緊急を要するケースもあると思うので自己判断せず病院を受診して医師の指示を受けて行動してください。




ロボット支援手術について 

以下は私の手術同意書に記載されたロボット支援手術の説明です。
―――――――――
・ロボット支援手術の特徴

①3D (3次元) および拡大視野による画像従来の胸腔鏡に用いられるものより高精細で、3D(3次元)表示が可能なカメラを備えています。
立体視ができ奥行きがわかるので、より正確で緻密な操作が可能です。画面も最大10倍まで拡大(ズーム)できるので細かいところまで確認した上での操作が可能です。
②自由度が高いロボットアーム
従来の胸腔鏡手術に用いる器具は、長い棒状で曲がらないため動かせる方向に限りがあります。ロボット支援手術では、胸の中に挿入するロボットアームにたくさん関節があるので (ちょうど人間の手首から指にかけてと同じです)、思い通りの方向に切ったり縫ったりすることができ、胸腔鏡手術に比べて容易にかつ正確に操作ができます。
③コンピューター補正機構 (手ぶれ補正、 モーションスケーリング)
コンピューターが術者の手ブレによる動きを除去します。また、術者の手の動きを数分の1に縮小して鉗子に伝えるため緻密な操作ができます。例えば、術者が手を1cm動かした時に、ロボットアームは1mmしか動かないということが可能です。

・ロボット支援手術の利点
上記7のような特徴から、具体的に以下のような利点があります。
①従来の胸腔鏡手術が難しかった状況でも、胸腔鏡下での手術が可能となる。
②小さな傷で手術が可能なので、開胸手術に比べて、痛みの軽減や早期回復が期待できる。
③臓器の様子が正確にわかり、緻密な操作が可能となるので、臓器/血管/神経の副損傷を回避することが出来る。

・ロボット支援手術の欠点
①ロボット手術が適していない方がいます
例えば、過去に胸部の大きな手術を受けた/腫瘍が極端に大きい、あるいは小さい等です。
②ロボットが途中で故障することがあります
入念なメンテナンスにも関わらず、手術の直前や途中でロボットが故障した場合は、通常の胸腔鏡手術や開胸手術に変更することがあります。
③触覚の欠如
ロボットアームには触覚がないため、触覚 (触った感覚) による情報を得ることができません。その代わりに、高精細かつ拡大可能な3次元画像を元に手術を進めます。

―――――――――
ロボット支援手術の紹介映像としては以下が参考になると思います。他にもyoutubeで「ロボット支援手術」と検索すると複数見つかります。さすがに症例数の少ない縦隔腫瘍摘出の映像はないですが、胸部なので肺がんの手術例が参考になるかと思います。
札幌医科大学の肺がん手術のロボット支援手術の例(最初は腎臓がんの例ですが中盤以降は肺がんの例です)

8月に出川哲朗が司会のTVの医療情報番組でもロボット支援手術の紹介をしていて、出川哲朗が実際にダビンチ(ロボットの名称)を使って針の穴に糸を通すことができていたので、まだ健康保険適用になったばかりで胸腺腫に対する症例数が少なかったとしても、肺がん手術等でロボット支援手術の経験のある医師であれば問題なく胸腔鏡以上の手技で手術を成功させてくれるだろうと自分に言い聞かせ医師を信頼することにしました。

経緯(入院~手術~退院~退院後1か月)

事前の説明では入院は標準で5日間と書かれており、入院診療計画書には少し余裕をもって7日目(術後5日目)まで書かれてありました。
<当初の計画>
 1日目:入院日:X線検査、採血、24時以降絶食
 2日目:手術日:絶飲食、術後床上安静
 3日目:術後1日目: X線検査、採血、朝より飲水可能、昼より食事開始、室内歩行開始、膀胱留置カテーテル 抜去
 4日目:術後2日目: X線検査、普通食、院内歩行開始、胸腔ドレーン 抜去
 5日目:術後3日目: X線検査、採血、普通食、院内歩行
 6日目:術後4日目:【退院予定】 X線検査、普通食、院内歩行
 7日目:術後5日目:【退院予定】 X線検査、採血、普通食、院内歩行
<実際の経緯>
 1日目:入院日:X線検査、採血、24時以降絶食
 2日目:手術日:術後床上安静、夜には飲食可
 3日目:術後1日目: X線検査、採血、普通食、室内歩行開始、院内歩行開始、膀胱留置カテーテル 抜去、胸腔ドレーン 抜去
 4日目:術後2日目: X線検査、【退院】

なんと!術後2日目には退院できました。胸腔ドレーンからの出血が少なく、術後1日目の夕方には点滴ラインを除いて身体についていたチューブがすべて取れたので自分でトイレに行くことができるようになりました。レントゲンの結果も良好だったため術後2日目には退院許可が出ました。
手術日からの状況をもう少し詳しく記載します。

手術日:
朝8時から手術で、手術時間は2~3時間、手術前後に麻酔や準備に2時間かかるので4~5時間かかると説明されていました。8時に手術室に歩いて向かい、手術室の説明ブースで手術前の同意書の確認に15分くらいその後手術室へ行き、手術台に寝て全身麻酔のマスクをされて深呼吸してと言われ深呼吸したら眠ってしまいました。当初硬膜外麻酔をすると説明されていましたが変更になったらしく硬膜外麻酔はしませんでした。
14時30分、手術室の回復室で麻酔から目覚めました。手術室に入ってから6時間半経っていました。胸に若干の違和感と膀胱留置カテーテルがついているので尿道に違和感がある程度でした。
点滴で鎮痛剤が入っているので痛みはありません。
特にICUには入らず病室に戻りました。私が麻酔から覚める前に主治医から家族に術後の説明があったようです。腫瘍を含む胸腺全体を摘出したとのことで、摘出した組織を見せてくれたそうです。妻が写真を撮っていて見せてくれました。意外に大きくて20.5×18.5×2.0cm(大人の手のひらより少し大きいぐらい)の組織を摘出したそうです。腫瘍自体は2.8×1.5×1.8cmですが、再発防止のために胸腺ごと摘出しています。腫瘍は当初の想定通りで病理の結果を確認しないとはっきりしないが所見では想定通りステージ1~2の胸腺腫であり、転移等も見られなかったとのことでした。出血も少なく輸血もしていないとのことでした。
酸素マスク、点滴、酸素モニター、心電図モニター、胸腔ドレーン、膀胱留置カテーテル、足には血栓を予防するフットマッサージ器具が装着されていて身動きがほとんど取れません。胸にも違和感があり電動ベットのリクライニングを利用しないと起き上がれない状態でした。
夕方、術後6時間後の20時以降になれば食事をとってもいいと言われましたが、全く食欲がわかなかったので食べませんでした。
起きていても辛いだけなので眠ろうと思いましたが、普段横向きで寝ているので、仰向けでなかなか眠ることができず辛かったです。翌朝までほとんど眠れませんでした。尿道の違和感は夜遅くには慣れました。手術の時に肺をへこませているので、若干息苦しい感じはありました。あとは37度台の発熱がありました。痛みがあるときにボタンを押すと点滴ラインから鎮静剤が投与されるボタンもありましたが痛みはなかったので1度も使いませんでした。体を動かせない辛さから悶々として一夜を過ごしました。

術後1日目
この日は劇的に回復します。
午前:朝食はなんとか食べられましたが、まだ点滴と酸素モニター、心電図モニター、膀胱留置カテーテルと胸腔ドレーンとフットマッサージ器具がついていたので身動きが不自由なのと胸に違和感があり電動ベットの助けなしに上体を起こすのはつらい状況でした。朝、ベットでレントゲン撮影をしたのですが、動くのが非常に辛かったです。
鎮痛剤のおかげで痛くはないのですが、胸部に力を入れられない感じで上体を動かせない感覚です。
午後:先生の回診があり胸腔ドレーンからの出血もなくなってきたとのことでドレーンを抜いてもらうと胸が少し楽になりました。胸腔ドレーンが予定より早く抜けたので今日問題なく歩き回れれば明日には退院できるとのことでした。
その後、酸素モニター、心電図モニター、膀胱留置カテーテルとフットマッサージ器具を外してもらえたらさらに楽になり、点滴もしなくなったので、夕方には病室内を歩けるようになりました。膀胱留置カテーテルをとった後はトイレで排尿すると尿道に激痛がします(胸の手術痕より痛い)これはこの後も2、3日続きました。。。。
この時点で上体を起こすのも自力で起こせるようになりました。手術日はシャワーを浴びていないので自力でシャワーを浴びて着替えをしました。
午後の回診の時に今日問題なく歩き回れれば明日には退院できるといわれていたので病棟内を2周くらい歩きました。2周目は胸が苦しくなったのでそこでやめました。肺の回復には多少時間がかかるようです。
夕方の回診の時に、順調なので病院でする処置は特にないので希望するなら明日退院でも問題ないと言われたので退院を希望しました。翌朝、レントゲン撮影をして問題なければ退院許可を出すとのことです。
この日の夜は昨晩眠れていない分よく眠れました。

術後2日目
レントゲン検査をしてその後主治医に手術痕を確認してもらいました。
手術痕は「剣状突起下アプローチ」という藤田保健衛生大学病院の呼吸器外科の先生が開発した術式だったので4か所で右の乳首から5cm下くらいに2か所、左の乳首から5cm下くらい1か所、鳩尾に1か所です。左右は1cm程度の傷、鳩尾は3㎝の傷です。抜糸等もありません。傷痕に防水の絆創膏が貼られているだけです。退院前に消毒して新しい絆創膏を張ってもらいました。そのままシャワーを浴びても平気で、絆創膏が取れたらそのままでもいいとのことでした。
レントゲンの結果も問題なく、まだ37度台の熱がまだありましたが家で安静にしていれば問題ないとのことないということで午前中に退院となりました。
退院処方は、消炎鎮痛剤(2週間分)と痛む時だけ飲む頓服の痛み止めだけです。11日後に外来でレントゲンと血液検査と診察ということです。

退院後
退院後も3日間は微熱が続いていたので家のベットでおとなしくしていました。傷が突っ張る感じはありましたが痛みはほとんどなく消炎鎮痛剤は飲んでいましたが、頓服の痛み止めは使いませんでした。
退院後の3日間は動きまわりすぎると体温が上がる感じでした。体内から「手のひら」くらいの大きさの胸腺組織をとっているので体内で炎症が起こっているのかなって感じでした。縦隔周辺には痛点がないので体内からの痛みはないんですよね。痛みは体表の傷痕が支配的で傷跡が小さいので痛みがほとんどないのだと思いました。
術後は1か月程度は散歩程度の運動を含め普段通りの生活が可能と説明がありましたが、回復を優先するため退院後1週間は会社を休んで静養していました。午前中は家で仕事(メールの処理とか)して午後は寝ている生活でした、リハビリのために犬の散歩は朝晩行っていました。

退院11日後(外来)
血液検査とレントゲン検査と傷痕の確認で通院しました。
状態的には胸は痛みはありませんが突っ張る感じや違和感が多少あります。
血液検査で炎症を表す数値は下がってきていて、肺のほうは膨らんできているけど、少し水が溜まっているとのことでした。やけどすると水膨れができると同じで大きな手術をすると体液が出るけど、そのうち吸収されるので問題ないとのことでした。退院処方の消炎鎮痛剤がなくなりそうだったので、1週間分追加処方していただきました。次回は2週間後にレントゲンと病理検査の結果通知での外来です。

退院27日後(外来)
レントゲンと病理検査の結果通知の確認で通院
肺は水もなくなって問題なし。
病理検査に結果は、予測通り、「胸腺腫 ステージⅠ(正岡病期分類)」で被膜に覆われている状態でタイプもそれほど悪性度が高くないものでした。摘出した胸腺組織で腫瘍は取り切れているとの結果でした。
以後は半年後にCTを撮影、その後は年単位でのCTを撮影しての経過観察とのことです。
半年後の検査予約をして、病理の結果が出たので保険会社の診断書の記載を申請して帰宅しました。
これでようやくほぼ1年に及ぶ縦隔腫瘍との闘い?が一旦終息しました。
術後1か月なので胸に違和感はあるので無理はできない感じです。
 ※胸の違和感は2か月目には完全になくなりました。

今回手術でお世話になった病院の主治医及び呼吸器外科の医師の皆さん、病院スタッフの方には本当にお世話になりました。特に主治医の先生は私の症例に合わせていろいろ調べて術式を検討していただき、術後のQOLの高い手術をして頂けました。手術に関する説明も丁寧でとても信頼のおける方でした。他のスタッフの方も皆さん患者のことを第一に考えていただける方ばかりで素晴らしい方ばかりでした。
複数の偶然が重なり巡り合ったとしてはとてもラッキーな結果でした。

入院・手術費用

高額療養費制度というのがあるので「組合健保」にご加入の方はご自身の加入する健康保険に事前申請し「限度額適用認定証」を入手し入院時に提示すればその限度額が窓口で支払う金額になります。限度額適用認定証を出していない場合は3割負担※です。私のケースは医療費の総額が109万円くらいだったので限度額適用認定証を提示していない場合は3割負担の場合は退院時に33万円支払うことになります。
参考)https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g3/cat310/sb3030/r150
注意事項が1点あります。この制度は月単位で限度額がリセットされるので、月を跨いで入院すると損します。
例:月内に手術と入院がおさまった場合→限度額の支払い
  月を跨ぐ入院の場合→手術の費用が支配的なので手術を実施した月は限度額の支払いで、月を跨いで入院した分は実費の3割負担を支払い←限度額+翌月の入院分の3割負担
同じ手術で同じ期間入院しても月を跨いだ入院だと月を跨いだ分は限度額がリセットされるので自己負担額が増えます

※入院時に限度額適用認定証を提示しなくて、窓口で実際の医療費の3割を支払ったとしても高額療養費で払い戻しができるので自分の加入している健康保険のホームページ等で確認してください。払い戻しに申請が必要な健康保険(主に「国保、協会健保の場合」)と健康保険側で自動で適用して給与口座に戻ってくるケースがあるようです(主に「組合健保の場合」)。
また、加入している健康保険が「組合健保」の場合は「付加給付」制度というのがあって、同一の医療機関に、入院・外来・診療科単位でそれぞれで月に25,000円以上の自己負担があると超えた分が給付される制度もあるようです。

まとめると実質の入院・手術費用は
 「国保、協会健保」の方は、年収に応じた高額医療の限度額
         報酬月額27万円以上~51万円5千円未満の方で約80,000円
 「組合健保」で付加給付制度があれば、25,000円+((医療費の総額-276,000)×1%)
です。

保険給付金

通常の医療保険の手術給付金(縦隔腫瘍摘出術)は適用されると思います。がん保険に関しては、胸腺腫は稀な症例なのでインターネット検索しても情報が少ししか出てきませんし、がん保険の適用になったりなかったりでケースバイケースのようです。病理検査の確定後の保険会社提出用の診断書に記載の病理組織診断名やTMN分類、浸潤癌or非浸潤癌・上皮内癌で保険会社が判断しているようです。保険会社や保険の加入時期によって「約款」の内容が変わるので支払い対象になるかどうかは変わってしまうため参考にならないので私のケースのコメントは差し控えます。

さいごに

私の場合、縦隔腫瘍は胸腺腫で進行度合いとしてはステージⅠ期(正岡病期分類)でタイプもそれほど悪性度か高くないものでした。ステージⅠ期で腫瘍を含めた胸腺自体も摘出しているので再発の確率は低いようです。手術もロボット支援手術を選択できたことで、傷痕も小さく術後の痛みもほとんどなく、回復も早く退院後1週間程度で職場復帰しています(仕事はデスクワークです)。妻のおかげで人間ドック受診で異常が発見され、最初の病院の呼吸器内科でのよくわからない経過観察での時間稼ぎとTVの情報番組のおかげで最新の治療法が選択できました。普段SNS等はやっていませんが、縦隔腫瘍は稀な症例なので同じ症例の方がこのページたどり着いてが新しい治療法の選択肢に気づいてもらえる機会になればと思いブログを作成しました。
おそらく検索でたどり着いた方は「縦隔腫瘍」と診断され情報を探しておられる方だと思います。私は初期で発見されて悪性度も低く治療の選択もうまく行きとても運が良かったですが、そうでない方もおられると思います。縦隔腫瘍は稀な疾患ですので、情報にアンテナをはり、よりよい病院と治療を選択されることを切に願います。

追記
2019年3月
半年検診でCTを受診。以下のレポートでした。
「術後部位には索状の濃度上昇を認めますが、術後変化の範疇としても解釈可能で、明らかな残存再発病変は指摘できません。リンパ節に有意な腫大はありません。」
縦隔に関しては特に問題はないようです。別の部位で1点経過観察の必要がある為、次回検診は1年後ではなく半年後となりました。

2019年10月
1年検診でCTを受診。以下のレポートでした。
「明らかな局所再発を認めません。有意なリンパ節肥大は認めません。」
とのことで予後は順調のようです。別の部位の経過観察も特に問題なさそうです。
次回の検診は1年後となります。
CTは保険適用で受けられるけど、念のためやっている健康診断の腫瘍マーカ検査が
高いですね。。。もっと安価に受けられればいいのに。。。

1年経ったので、時間があるときに情報のアップデートをしようと思います。
縦隔腫瘍でのロボット支援手術ができる病院も増えてきているようですしすね。。。

2020年1月
コメント覧でご相談頂き、調べたてアップデートした情報を追記します。
・ 藤田医科大学病院:(本文中では藤田保健衛生大学病院と記載してますが名称が変わったようです)
  https://hospital.fujita-hu.ac.jp/

・【第51回 希少がん Meet the Expert:胸腺腫・胸腺がん】講演:渡辺 俊一
 「国立がん研究センター中央病院 呼吸器外科 渡辺 俊一」
  2019年9月20日の講演で2019/10/28に公開
  https://youtu.be/at_Z9SWoMnc
  手術映像もあるので苦手な人は気をつけて下さい。
  胸腺全摘でなく部分切除でも予後は問題ないみたいです
  取り切ることが最優先で低浸潤だけにこだわらないほうがよいとのことです。
  
・【第51回 希少がん Meet the Expert:胸腺腫・胸腺がん】講演:後藤 悌
 「国立がん研究センター中央病院 呼吸器内科 後藤 悌
  2019年9月20日の講演で2019/10/28に公開
  https://youtu.be/kD1crDVQpOA
  今年は呼吸器外科の先生の講演もあったので、後藤先生は呼吸器内科なので
  手術適用にならないケースや再発時の説明メインで初期の説明は呼吸器外科や
  去年の講演の方が判り易いです。

コメント欄でご相談頂いて、私は出血リスクを最小限にするためにロボット支援手術が出来る病院を選択しましたが、胸腺腫は症例も少ないのできちんと画像診断出来て対応方針を事例に基づき検討して頂ける病院に相談されることが、納得感があり安心ということが分かりました。


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